むかし むかし、かなざわの さいがわの そばに、きゅうな さかみちが ありました。
さかの うえには、みょうけいじ という おてら。
こうよう しょうにん という、やさしい おしょうさまが すんで いました。
ある はれた ひ、しょうにんは おうみちょうの いちばを とおりかかりました。
おや、ひとだかり。こどもたちが とんびを つかまえて います。
「さかなを ぬすんだ どろぼう とんびや! こらしめて やる!」
「まって おくれ。いのちは ひとつきり、そまつに しては いかん。この とんびを、わしに ゆずって くれんか」
とんびは かなしそうな めで、しょうにんを みあげました。
「おしょうさんが いうなら、しゃあないな」
おてらに かえった しょうにんは、けいだいで とんびを はなして やりました。
「もう わるさを しては ならんぞ」
とんびは そら たかく まいあがり、くるり、くるりと わを かきました。
まよなか。ひとの けはいに、しょうにんは はっと めを さましました。
「わしは ひるまの とんびじゃ。ほんとうは てんぐ なのじゃ。おれいに なんでも あげよう」
「いやいや、おれいなど いらんよ」
「それなら、この てらを ずっと まもる おまもりを のこそう」
てんぐは おおきな はっかくの いたを とりだし、とんびのような するどい つめで ほりはじめました。
がり がり、がり がり……
うらにも ひとつ、「小」の じ。
「これが この てらを かじから まもるじゃろう」
てんぐは けむりのように きえました。
ゆめ? いいえ。あさに なっても、しょうにんの てには いたが のこって いました。
やがて ある とし、さかの あたりで おおきな かじが おきました。
まわりは みんな やけたのに、みょうけいじ だけは のこったのです。
「てんぐさんが まもっとる。てんぐさんの てらや」
やけた さかは ひろく なおされ、くちを あけた はまぐりに にて いたので「はまぐりざか」と よばれて います。
てんぐさんの いたは、ながい つきは「大」、みじかい つきは「小」を おもてに して、いまも みょうけいじに かけられて いる そうです。