はるの あさ。
ぼくは まいにち かわらに でて、とおくの やまを ながめます。
むらさきいろの やまが、しずかに そびえて いました。
「あの やまの おくには、なにが あるの?」
ぼくは ねえさんに ききました。
「くすりに なる くさが、たくさん はえている やまなの。だから、いおうぜんって いうのよ」
「やまの てっぺんには、あおい いけが あるんですって。
そらだけを うつして、そこまで あおくて、つめたい つめたい みず。
おおいけって いうのよ」
「さかなは いないの?」
「みずが つめたすぎて、さかなは いないの。そのかわり、あかい いもりが いるのよ」
かさの ような おおきな いしの まわりを、ちいさな ひとみたいに ちょろちょろ およいで、ひとが くると そこへ かくれて しまうんですって。
「きしから いけへ、みずくさが なんじゅうねんも かけて あんだ『しばの うきはし』が あるの。
ふむと あしの うらに、じわっと つめたい みずが しみるんですって」
「やまには どんな はなが さくの?」
「むらさきの つつじ、ゆり、いわてらし、ゆきのした。
まちで さくらが ちったころ、やまの さくらは ふもとから てっぺんへ、いちにち ずつ さきのぼって いくのよ」
そのとき、しろい くもが ふわりと ながれてきて、やまの てっぺんに かかりました。
まるで ちいさな ぼうし みたい。
じっと みていると、やまは、いきを している ように みえました。
ぼくは きょうも、かわらに でて やまを ながめます。
みたことの ない あおい いけが、めの まえに うかんで きます。
いけには ふしぎな いいつたえも あるそうです。
いおうぜんは いまも、かなざわの ひがしに みえています。